プロジェクト2015

『眠っているピアノのふたを開ける』プロジェクト解説

旧千酌小学校のピアノ

旧千酌小学校のピアノ

三村竜太郎です。今回は『はいまーと』のプログラムのひとつである『眠っているピアノのふたを開ける』プロジェクトの紹介です。

2年前の夏、プロジェクトのリサーチのため、松江市美保関町内に点在する廃校舎を見学させて頂いていたときのことです。校舎内の教室を順々に巡った後、足を踏み入れた音楽室で待っていたのは、閑散とした空間にぽつんと残されたグランドピアノの姿でした。大きなピアノが目の前にただただ放置されているという物珍しさも手伝い、誰も聴いていないことを良いことにピアノの蓋を開け、適当に音を鳴らしてみました。校舎の中にこもった湿度のせいか、ピアノの音程は、まるでどこか錆びてしまっているのではと思わせるほどひどく狂っていました。弾き手が不在のまま、何年も眠っていた時間の厚みを感じさせるような、そんな音でした。

その場で心に浮かんだのは「島根にはこんな風に眠っているピアノが一体、どれぐらいの数あるのだろうか」という疑問。そして「その眠っているピアノのふたを一つずつあけて弾いたとしたら、それぞれどんな音が返ってくるのだろう?」という好奇心でした。面白いもので、その廃校での体験の後、むしろ気になって来たのは日常的な場所で見かけるピアノのことでした。例えばお邪魔した家で、宿泊した旅館やホテルで、または公共の施設で、まるでただそこに置かれているだけに見えるピアノの姿が目に入ると、ついついそのピアノが「起きている」のか「眠っている」のかがどうしても気になってしまうのです。

実際、島根県にはどれぐらいの「眠っているピアノ」があるのでしょうか?総務庁統計局が実施した統計によると、日本国内に普及しているピアノの台数は約1000万台、そのうち7割にあたる700万台が何らかの理由で現在使用されていない、いわゆる「休眠ピアノ」であるというデータがあります。この比率を島根県に当てはめると、世帯数(約26万世帯) に対する県内のピアノ普及率(27,1%)の7割、つまり5万台近くのピアノが眠っている推算になります。

島根で眠るおよそ5万台のピアノ。もしその全てのふたを開けるとしたら、それはもちろん大きな規模のプロジェクトになります。しかし実際にそれぞれのピアノのふたを開けること自体は、小さな女の子の手でも充分に可能なアクションです。『はいまーと』はゆっくりと時間をかけて1台1台ずつ、県内の休眠ピアノのふたを開けていきます。これから近い未来にそのふたが開けられるピアノの中には、きっと部屋の片隅で家具の一部となっていたピアノもあるでしょう。もしかしたらどこか暗いところに仕舞われてしまっていたピアノもあるかもしれません。しかし楽器は何よりも弾かれるためのもの。そして楽器である限り、眠っていてもまた誰かに弾かれることによって、再び命が戻ってくるものです。

県内の各地域で、その土地に眠る何台ものピアノのふたが次々と開かれ、再びその土地に音楽が戻ってくること。そしてこのプロジェクトを継続していくことで「眠っているピアノが目を覚ます出来事」がいつの間にか島根の新しい日常の一部になれば何よりのこと。そんな思いを抱きつつ、ドイツで活動する島根県出身のピアニスト中山敬子さんにご協力頂き、2014年の美保関でのアートイベント『はいまーと』の1プログラムとして当プロジェクトはスタートしました。2015年は出雲市の地域内で長い期間弾かれていないままの状態のピアノを公募し、その場所にお邪魔して「眠っているピアノ」を本来の楽器に戻す訪問ミニコンサートを実施します。

まだまだ走り出したばかりのプロジェクトですが、どうか応援頂ければ嬉しく思います。どうぞご協力よろしくお願いいたします。

三村竜太郎

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